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「歯周病菌を減らしましょう」
「虫歯の原因となる細菌を増やさないようにしましょう」
これまでの予防歯科では、お口の中の病気に関係する細菌をコントロールすることが重視されてきました。
もちろん、これは現在でも予防の基本となる大切な考え方です。
一方、近年では「細菌を減らす」という視点だけではなく、お口の中に存在するさまざまな細菌と、そのバランスに目を向ける研究も進んでいます。
その一つが、プロバイオティクスを利用した「バクテリアセラピー」という考え方です。
今回は、お口の中の細菌と虫歯・歯周病との関係、プロバイオティクスとは何か、そして健康寿命を考えるうえで予防歯科が果たす役割について解説します。
1.お口の中には多くの細菌が存在している
「細菌」と聞くと、「身体に悪いもの」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
しかし、私たちの身体には非常に多くの微生物が存在しています。
お口の中にも多種多様な細菌が生息しており、その集まりを「口腔内細菌叢(こうくうないさいきんそう)」などと呼びます。
すべての細菌が病気を引き起こすわけではありません。
多くの微生物と共存しながら、私たちは生活しています。
「細菌をゼロにする」が予防ではない
どれだけ丁寧に歯を磨いても、お口の中からすべての細菌をなくすことはできません。また、細菌を完全に排除すること自体が予防歯科の目的でもありません。
重要なのは、虫歯や歯周病が起こりにくい口腔環境を維持することです。
そのためには、細菌そのものだけではなく、
・毎日の歯磨き
・食生活
・唾液
・喫煙などの生活習慣
・定期的な歯科受診
など、さまざまな要素を考える必要があります。
2.虫歯・歯周病と口腔内細菌のバランス
虫歯や歯周病には、お口の中の細菌が深く関係しています。
ただし、「特定の悪い細菌が存在する=必ず病気になる」という単純なものではありません。
虫歯が起こる仕組み
虫歯は、細菌だけでなく、
・糖質の摂取
・歯の状態
・唾液
・時間
・セルフケア
など、複数の要因が関係して起こります。
糖質を摂取すると、プラーク中の細菌が酸をつくり、歯の表面では脱灰が起こります。
唾液などの働きによって再石灰化も起こりますが、脱灰が優位な状態が続くと、虫歯につながる可能性があります。
歯周病と細菌
歯周病では、歯と歯ぐきの境目などに形成される細菌性プラークが大きく関係します。
プラークに対する身体の炎症反応が続くと、歯ぐきに炎症が起こり、進行すると歯を支えている歯槽骨などの歯周組織が失われる場合があります。
このように虫歯や歯周病を予防するためには、「細菌を全部なくす」のではなく、病気が起こりにくい環境をつくるという考え方が重要になります。
3.プロバイオティクスとバクテリアセラピーとは?
「プロバイオティクス」という言葉を、ヨーグルトや発酵食品などで聞いたことがある方も多いでしょう。
プロバイオティクスとは、適切な量を摂取したときに健康上の利益をもたらす生きた微生物を指します。
腸内環境との関係がよく知られていますが、近年では口腔内への応用についても研究されています。
バクテリアセラピーという考え方
「バクテリアセラピー」は、プロバイオティクスなどを利用し、口腔内の微生物環境に働きかけることを目指す考え方です。
従来の、「病気に関係する細菌を減らす」という考え方に加えて、「口腔内の微生物環境をどのように維持するか」という視点を持つものです。
例えば庭を管理するときに、雑草を取り除くだけではなく、植物が育ちやすい環境そのものを整えていく。
そのようなイメージに近いかもしれません。
バクテリアセラピーだけで虫歯・歯周病を予防できる?
ここは特に注意が必要です。
プロバイオティクスの口腔内への応用については研究が進められていますが、「摂取すれば虫歯にならない」「歯周病が治る」と考えるものではありません。
虫歯や歯周病の予防・管理では、
・毎日の適切なセルフケア
・食生活の管理
・必要な歯科治療
・定期的なメンテナンス
などが基本です。
バクテリアセラピーは、こうした基本的な予防を置き換えるものではなく、口腔環境を考えるうえでの補完的な選択肢の一つとして捉えることが大切です。
4.健康寿命を考えるうえで大切な予防歯科
健康寿命とは、健康上の問題によって日常生活が制限されることなく生活できる期間を示す指標です。
年齢を重ねても、「自分の口で食事を楽しむ」「人と会話する」「笑顔で人と関わる」といった生活を続けるためには、お口の健康や口腔機能を維持することも大切です。
「噛めること」と健康
歯を失ったり口腔機能が低下したりすると、食べられる食品が変化することがあります。
高齢期では、口腔機能の低下と低栄養やフレイルなどとの関連についても研究されています。
ただし、「歯科治療を受ければ健康寿命が延びる」と単純に言えるものではありません。
健康寿命には、食事、運動、睡眠、全身疾患、生活環境など、さまざまな要因が関係します。
その中の一つとして、お口の健康を維持することも健康的な生活を支える重要な要素と考えることができます。
5.足立優歯科が考える「治すから守るへ」
足立優歯科では、「悪くなった歯を治療する」だけではなく、「なぜ悪くなったのかを調べ、再び問題が起こるリスクをできるだけ減らす」ことを大切にしています。
そのため必要に応じてデンタルドック(精密検査)を行い、
・虫歯の状態
・歯周病の状態
・唾液や虫歯のリスク
・過去に治療した歯や修復物
・噛み合わせ
・歯ぎしりや食いしばり
・生活習慣
などを総合的に確認します。
一人ひとりで「リスク」は違う
虫歯になりやすい方。
歯周病のリスクが高い方。
噛む力によるトラブルを起こしやすい方。
患者さまによって、お口の問題が起こる背景は異なります。
だからこそ、「全員に同じ予防をする」のではなく、その方のリスクに合わせて管理方法を考えることが重要です。
プロバイオティクスやバクテリアセラピーについても、それだけで予防するという考えではなく、お口の状態や生活習慣などを総合的に考える中で位置づける必要があります。
まとめ|予防歯科は「細菌をなくす」から「環境を整える」へ
私たちのお口の中には、多種多様な細菌が存在しています。
大切なのは、すべての細菌をなくすことではありません。
虫歯や歯周病が起こりにくい口腔環境を維持することです。
プロバイオティクスを利用したバクテリアセラピーは、口腔内の微生物環境に着目した考え方の一つとして研究されています。
ただし、それだけで虫歯や歯周病を予防・治療できるものではなく、毎日のセルフケアや食生活、必要な治療、定期的なメンテナンスなどが予防の基本です。
そして予防歯科で大切なのは、「今、虫歯がないから大丈夫」ではなく、「なぜ今の状態を維持できているのか」「将来どのようなリスクがあるのか」まで考えることです。
足立優歯科では、デンタルドックを通じてお口全体の状態を確認し、患者さま一人ひとりのリスクに合わせた予防方法をご提案しています。
治すから、守るへ。
将来も食事や会話を楽しめるお口を目指して、健康なうちからご自身のお口の状態を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。



