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体の不調は、口の中の病気から ~病巣感染から体を守る~

2023年8月18日

体の不調は、口の中の病気から ~病巣感染から体を守る~

口から入る細菌

感染症と呼ばれる病気は、本来体の中にはいるはずのない、さまざまな細菌が体の中に入り込むことにより起こります。

ではこの細菌はいったいどこから体に入るのでしょうか?

細菌が体の中に入るルートは、注射や怪我など本来は外部と接触しないところから入るケースを除けば、空気の通り道となる呼吸器、さまざまなものに触れる皮膚、そして口から始まり肛門まで人が栄養を摂取するための消化器が主なところです。
この中では、消化器が最も細菌と接触している場所であり、その中でも口の中が最も細菌の種類が多い場所なのです。
しかし口の中には多くの細菌が住み着いている反面、細菌が体内には入らないような防御の仕組みも備わっているため、基本的には細菌が数多く住み着いていても問題はありません。
しかしながら口の中に病気が発生すると事情は変わります。体の中に細菌が入り込む防御システムが働かず、病気の個所から直接体内に様々な細菌が入り込むのです。

多くの方は口の中に病気が起こっていることを知らずに放置している状況があることと、口は最も多くの種類の細菌が住みついている状態であることを考え合わせると、人に病気を発症させる多くの細菌は口から感染していると言えます。

口の中の病巣

口の中に病気があるとき、口の中の細菌が体内に入り込めるルートができるわけですが、その感染源となる場所を病巣と呼びます。口の中に発生する病巣には次にあげるようなものがあります。

①むし歯  
    むし歯が進行すると歯の中の歯髄【神経と血管がある所】とつながり
    そこから細菌が入る 
   
 ②歯周病 
    歯と歯ぐきの隙間の溝に発生するため、細菌の住処となり、炎症のある歯ぐき
    から細菌が入る  

 ③根尖病変  
    歯の根の先端にできる膿の袋、虫歯の進行を放置したり、不完全な歯の根の治         
    療によりでき、そこから細菌が入る

これらの病巣は完全に取り除くことができますが、病巣の存在に気づかなかったり、またそれらの徹底した除去を行わない方が多く、かなりの確率でこれらの病巣を持っている方がいます。

病巣感染による全身疾患

この病巣が原因となって起こるのが病巣感染です。
病巣感染とは、口に限らず体のどこかに慢性の感染症があり、これが細菌の体への入り口となって細菌が入り込みます。
そして病巣とは離れた臓器に2次的に病気を起こすことです。
病巣との関係性が解明できないことや病巣と発病した場所が離れていることにより直接的な関連性が考えにくいという特徴があります。

リウマチ熱や敗血症などは口からの病巣感染としては良く知られていますが、たとえばアトピー性皮膚炎や掌蹠膿疱症といった病気がむし歯や歯周病などの治療を行い、口の中の慢性の感染を取り除くことによって治癒するようなことがあり、感染症ではないこれらの病気も歯や口にまつわる病巣感染ではないかと考えられます。
このように他の場所が原因で発生した別の場所の病気の炎症などの症状に対し、ステロイドなどを用いて消炎治療を行ったとしても病気自体が治らないことは良くあります。これは発生した症状に対し対症療法を行っているためであり、病気の本当の原因を排除するという原因療法を行っていないためです。
体に不調を訴えて医者に行くと、病気の治療に先駆けて口の中のチェックと治療から始める国もあるほどで、医療の世界では、これらの病巣を取り除くことが重要と着目されています。

全身の健康のためにも、口の中に病巣が無いかを確かめ取り除き、健康に保っておくことが賢明です。

体の不調は、口の中の病気から ~歯周病と糖尿病~

2023年8月18日

体の不調は、口の中の病気から ~歯周病と糖尿病~

日本人の糖尿病

糖尿病とは、食事により摂取したものから分解された糖分が適切に体に吸収されず血液中に溜まってしまう状態が続く病気です。
この状態が続くことで、心臓病、腎臓病、脳卒中、失明などの合併症が引き起こされますので、決して見過ごすことのできない病気と言えるでしょう。
世界人口の5%が糖尿病患者といわれていますが、日本では平成19年の国民健康・栄養調査から約2200万人の方が糖尿病であるという報告があり、日本においても深刻な病気の一つとなっています。

さて糖尿病の患者さんでは歯周病の悪化が認められることから、かなり以前から歯周病も糖尿病の合併症であると認識されていました。
特に糖尿病の方においては歯周病患者さんの割合が多く、またその症状がより重症化しており、糖尿病があると歯周病が進行するリスクが高いと言えるのです。

なお近年、糖尿病の合併症としての歯周病ではなく、歯周病が糖尿病を引き起こすという新たな状況も確認され始めてきました。

歯周病が糖尿病を引き起こす

歯周病の患者さんでは、糖尿病を発症するリスクが高く、また歯周病がある状態を放置しておくと糖尿病の治療において行う血糖値のコントロールがうまくいかないという報告です。

アメリカ国民健康栄養調査(NHANES)を用いた研究では、歯周病患者における糖尿病有病率は、歯周病の無い人と比較して約2倍もあることが示されています。
ドイツで15年にわたって行われた追跡調査では、歯周病になっているが糖尿病にはなっていない患者群が、歯周病にも糖尿病にもなっていない患者群と比較して、5年経
過後でHbA1cの数値が悪化傾向にあることが見つかりました。

糖尿病患者の95%と言われるⅡ型糖尿病患者に限っては、歯周病における基本治療である歯肉縁上・縁下の歯石除去などの手術を伴わない歯周病治療を行った場合で
も、血糖値のコントロールに対し治療前後のHbA1cの加重平均差が-0.4%と統計学的にみても有意に変化があることが見つかっています。
これは歯周病によって腫れた歯肉から容易に血管内に侵入した細菌が血管内で死滅した後に、その死骸に含まれるエンドトキシンという内毒素が血糖値に影響を及ぼすことによります。血液中の内毒素は脂肪細胞や肝臓からのTNF-αの産生を強力に推し進めますが、これには血液中の糖分の取り込みを抑える働きもあるため、血糖値を下げるインスリンホルモンの働きを邪魔してしまうことによるのです。

体の一部としての口の管理

多くの方は歯医者を歯の修理屋さんとしてとらえ、口と体は別物のように考えています。
医療教育の現場でも医学部の中に歯科があるのではなく、歯学部が別に分かれて存在します。このため体の病気と口の中のトラブルは別に考えてしまいがちです。
しかし、口の中の問題が体全体に影響していることを考えると、健康な体を保つためには適切なお口の健康管理が不可欠と言えます。

糖尿病がうまくコントロールできない方は、一度お口の状態をチェックしてもらうことが良いでしょう。

噛める入れ歯でなんでも食べる ~コーブルバランサーを用いた古くて 新しい総入れ歯づくり~

2023年8月18日

噛める入れ歯でなんでも食べる

~コーブルバランサーを用いた古くて

新しい総入れ歯づくり~

噛めない、痛い、入れ歯の理由

入れ歯で苦労をされている多くの方は、
「歯もないし、歯ぐきも痩せているから、仕方ない」と諦めておられます。
しかし一方では、入れ歯だけれどしっかりと食事が出来る方もおられます。
この違いはどこにあるのでしょうか?

総入れ歯では支えとなる歯がありませんから、歯ぐきが咬む力を支えます。
しかし入れ歯で咬む力を支えるときには歯ぐきがひしゃげた状態になりますから、この状態が均一になることが重要です。
もし均一にならなければ、特定の場所に力が集中したり、よりひしゃげる方向に入れ歯がずれて痛みを発生させるのです。
つまりこの問題をしっかりと解決したか否かがポイントなのです。

問題が起こる要素

良く噛めて痛くない入れ歯では、入れ歯を支えるすべての歯ぐきにおいてこれらの誤差を補正することが必要です。
多くの場合は入れ歯を入れた後にカチカチと咬みあわせ、入れ歯を使いながら、あちこちを少しずつ調整してこの誤差を整えます。
この調整が厄介であり、手間がかかりますが、もしこの調整を怠ると、噛めない入れ歯、痛い入れ歯となるのです。

もう一つの大切な要素は、上下の顎の距離を整え、前後左右方向へのズレを無くすことです。
噛めて痛くない入れ歯を作るには、あごの関節の正しい位置で上下の入れ歯を噛ませる必要があります。
しかしながら下あごの骨は、左右に関節があり様々な方向に動くことができるうえに、人間の体の中で唯一ぶら下がった状態になっています。
このため正しい前後左右の位置が決めにくいのです。
また、上下の顎の距離については、上顎の歯ぐきの土手の面と下あごの歯ぐきの土手の面がほぼ平行になる状態の高さとし、そのほぼ中央に位置するかみ合わせ面もこの顎の土手と平行になるように噛ませる必要があります。
そうでないと噛んだ時に入れ歯がずれて動いてしまうからです。

実はこれらの事を同時に決定し、作り上げる入れ歯に反映しなくてはならず、これが入れ歯づくりを難しくしているのです。

古くて新しい治療器具

昔から多くの歯科医師がこの難題と取り組んできました。
そこには知恵が凝縮されており、この難題も解決策を見いだしています。
歯医者さんごとにこの問題解決の仕方は異なりますが、私はコーブルバランサーという治療器具を用いています。
写真のような器具を上下の歯の間に取り付け、前後左右の位置、上下の高さを、実際に患者さん自身が咬む力を粘膜に加えた状態で決定する装置です。
中心部の一つの軸で噛む力を支えるため、最も均一に歯ぐきに力を加えた状態で歯ぐきをひしゃげさせて記録が取れます。
日本国内では販売されていないため、この治療器具を用いる歯医者はほんの少しですが、極めて有効な治療器具です。
開発されたのは何十年も前ですが、現在使われない器具が良好な結果を出すという意味では、古くて新しいものと言えるでしょう。

なお、良く噛めていたくない入れ歯づくりにはこのほかにもいろんな配慮が必要です。なかなかうまくいかないという方は、主治医の先生といろんな方法について良く話し合ってみて、少し手間をかけたとしても納得ができる入れ歯を作られることをお勧めいたします。

噛める入れ歯でなんでも食べる ~歯の形と噛ませ方~

2023年8月18日

噛める入れ歯でなんでも食べる ~歯の形と噛ませ方~

入れ歯を安定させる
上下の歯の並べ方と噛ませ方

歯がまったくなくなってしまった方に使う入れ歯を総入れ歯といいます。
この総入れ歯は上顎では大きな床面積により上顎に吸い付くように収まりますが、下顎では細い歯ぐきの土手に入れ歯が乗っているような状態となります。
そしてすべての入れ歯の歯は歯ぐきを再現した床【ピンク色をした土台部分の事】の上に並べられ、この歯が上下で接触することにより、食べ物を噛み潰すことができるのです。
しかし入れ歯に並べられた歯はこの床によりすべてがつながっているという特徴を持っているわけであり、不安定な状態ですべての歯がつながっていて動くという状況となり、これが入れ歯づくりの難しさの原因となっているのです。

右側で噛んで力が加われば当然つながっている反対側も動くこととなり、このことにより入れ歯が外れたりすると噛めません。
さらに外れなくても入れ歯が動けばこの入れ歯の床部分と歯ぐきがこすれてしまうこととなり、傷が出来たり痛みを発する原因となってしまうのです。
これを解決する方法が上下の歯の形とその並べ方、噛ませ方なのです。

入れ歯が安定する歯の並べ方

入れ歯において重要な要素は、歯を並べる位置の設定です。
軽く口を開いた状態で下あごの様子を観察すると、歯がある方では下唇と左右の頬、そして内側にある舌の双方の中間部分に歯が並んでいるのが観察されます。
この部分は頬や舌の邪魔をせずまたこれらの部分にある筋肉にうまくサポートしてもらうことができる場所であり、ニュートラルゾーンと呼ばれます。
入れ歯づくりにおいてはこの空間に入れ歯を収めることが重要であり、このことで入れ歯が安定します。
入れ歯が小さすぎるとこの空間の中でころころ動いてしまいますが、逆に大きすぎると筋肉に押され入れ歯の位置が動いてしまい噛みづらくなってしまうのです。

また歯が並ぶ高さも重要です。安静にした状態の舌の高さと同じ歯の高さが理想ですが、もし低すぎたり高すぎたりすると、食べ物がうまく噛みあわせの面に乗らず噛みにくくなってしまうのです。

6次誘導を賄う
リンガライズドオクルージョン

次に大切なことは噛みあわせの調整です。

自分の歯が残っている方では、顎が動くときには歯が顎の動きを調整します。
噛みあった状態から下あごが前後左右に滑るように動くときには、どこかの歯が接触してその動きをコントロールしているわけです。
しかしすべての歯を失った場合、歯ぐきに乗っている入れ歯は不安定で横揺れの力に対抗することはできませんからこの役割を果たすことはできず、顎の動きを制限するのは左右の顎関節となります。
あごの関節は前後左右上下方向という3つの方向に動くことができますが、この関節が左右にあるため顎の動きは3+3の6つの動きが同時に関係する6次誘導という複雑な動きとなるのです。
この動きにおいて入れ歯がずれることなく安定して均一に力を受け止めるためには、その動きを妨げない歯の形と噛みあわせの作り方が必要です。

これを解決する方法がリンガライズドオクルージョンというかみ合わせの調整方法なのです。

歯のかみ合わせの面には、山形のとがった部分と谷型のへこんだ部分があります。
この山と谷の形が上下でうまく噛みあうことにより効率よく噛むことができるようになっいます。
この場合の谷となる凹みの形を顎の動きと一致するように調整することで、入れ歯が横揺れしない、安定した状態にすることができるのです。
これらの歯の並べ方、噛みあわせの調整の仕方は先生によって考え方が異なるため、すべての先生がこのことに配慮ができているわけではありません。
しかし入れ歯が噛みにくい、うまく使えない、という方では、一度これらの様子を確認してもらい配慮してもらうと良いかもしれませんね。

失敗しない入れ歯づくり ~自分に合った入れ歯づくりの見つけ方~

2023年8月7日

失敗しない入れ歯づくり

~自分に合った入れ歯づくりの見つけ方~

歯を失ったら

「この歯はもう使えません。抜いて入れ歯を作りましょう」

先生からのこの一言は大変つらいものですね。
日々の不養生は自分の責任であったとしても、歯を失うということは体の一部を失うことであり、大変つらいことです。
さて、仕方なく歯を抜いていただいたとして、そのあとそこにどうやって歯を入れ、使えるようにするか?
これは厄介な問題でもあります。
歯を失った場合には3種類の治療方法があります。

①失った歯の左右の歯を使って冠でつなぐブリッジ

②残った歯にばねをかけて歯を入れる取り外し式の部分入れ歯

③人工歯根を使って歯を入れるインプラント

それぞれの方法には、それぞれ利点欠点があります
が、でもどの方法を選ぶのかは大変悩ましいものです。
ましてや専門的な知識のない患者さんにとってはなおさらの事、
いったいどうすればよいのでしょう。

入れ歯づくりで成功している人

歯を失っても快適にすごしている方はたくさんおられます。

その方々に共通する点は、歯医者任せにするのではなく、治療前に十分な調査を行い、しっかりと納得して治療を受けていることです。
そのためには、精密な検査を受け、治療方法について歯医者さんとじっくり話をされています。
また、歯を失った原因をしっかりと見極め、その原因から取り組んでいることも特徴です。
いくら新しい歯を入れても、歯を失った原因が残っていればほかの歯がまたやられてしまい、新たな治療を繰り返さなければならないからです。
さらに歯を失ったところへの部分的な治療ではなくお口全体をしっかりと治療しているという点です。
治す歯はお口の中の一部分であっても、歯を使うときは口全体で使いますから、口全体のバランスが取れていないと安定して長持ちする結果が得られないからです。

自分に合った入れ歯の見つけ方

さて、いよいよあなたの歯を作りはじめることになりました。
部分入れ歯を作るための精密検査では、残った歯のむし歯・歯周病・治療の様子・咬みあわせなどの確認から始めなければなりません。
また総入れ歯の方の場合では、うまく使えていない今の入れ歯の問題点を明確にすることが必要です。
100人居れば100通りの配慮がなされなくてはなりませんから、顎の形・骨の量などの評価に加え、歯が揃っていた当時の顔立ちや口元の様子なども参考にしながら、改善すべき点を明確にすることが重要となります。

そのために有効な方法がデンタルドックです。
デンタルドックでは、1時間の時間をかけ、コーンビームCTを含むレントゲン写真撮影により歯や骨の様子を調べます。
さらにお口の中の写真、歯列模型や咬みあわせの精査など、現状を招いた問題点を詳しく診査診断する検査を行います。
引き続きデンタルドックでは、検査結果の報告にも1時間の時間が確保され、ゆっくりと十分な相談をすることができます。
この報告と相談をもとに近隣の先生に治療を依頼することも可能ですが、ご希望の方にはより具体的な治療計画を作るお手伝いも可能です。

このようにデンタルドックを活用することで自分に合った入れ歯とはどんなものなのかをより具体的に知ることができるのです。

今、医療に欠けているもの ~「聴く」ことから始まる患者中心の医療~

2023年8月7日

今、医療に欠けているもの

~「聴く」ことから始まる患者中心の医療~

お口の悩み

平成16年に設立されました「特定非営利活動法人明日の歯科医療を創る会POS」は、10年目を迎えています。

これまで地域社会や歯科医療界に対しさまざまな活動を展開してきましたが、お口の問題でお困りの患者さんを対象として行ってきました個別相談では、相談される方に共通する悩みがありました。

それは患者さん自身の期待や希望に反して、治療結果の成果が得られていないことであり、結果として歯を失い、うまく咬めない、食べることができないといったことでした。

多くの方はこのような悩みに陥る原因を、ご自身の歯性が悪いと考えたり、また治療を受けている歯科医師の技量の問題だと考えがちでした。当然歯科医師の数だけ病気に対する診断の違いがあり、医療技術も違いがあり、また患者さん自身の状況にも違いがあるわけですから、このような考えが間違っているとは言えません。
しかしこのような違いがあったとしても、丁寧に患者さんと患者さんの抱えている問題に取り組めば必ず良好な結果が得られることは、現在の歯科医学のレベルから考えて十分に期待できることでもあるのです。

では患者さんがお口の悩みから解放されないその問題点はどこにあるのでしょうか?

医療への期待

医療は科学として目覚ましい発展を遂げています。病気の実態は解明され、再生医療などの先端技術は失われた機能を十分に回復させることができます。
しかしその医療技術を適応する対象者は患者さんであり、個別の感情を持ち、価値観を持ち、生活背景を持ち、そして医療に対して期待することも違っています。

ある方は、どうしても自分の歯で過ごしたいと考え、そのためにはどのような代償を支払うことも構わないと考えます。
しかし別の方では、問題が発生した歯で悩むよりも、新たな技術を駆使してより良い状態へと改善を望まれます。
つまり、患者さん個々において希望すること、期待する結果は患者さんごとに異なるということが前提としてあるのです。

これに対し医療提供者側はその患者さんの個別性や期待の違いを理解できてはいません。患者さんを個別の感情を持った人格ととらえるよりも、発生した状況、症例のタイ
プにより識別し、医療提供者自身が考えるより良い医療を患者さんに適応しようとします。
これがいわゆる「治療を薦める」という医療者の行動となります。
この医療行為では、医療者が主体となり患者さんを説明により納得させるということを行うのです。
多くの方が経験された、

医療者:「この歯は残念ですがもう使えません。歯を抜いて入れ歯にしましょう。
      よろしいですか?」

患者:「はい、わかりました。よろしくお願いします」

といった会話の流れがこれに当たります。

「聴く」という医療行為

現代において医療のあるべき姿として支持される患者中心医療の概念では、このような医療者の行動は全く違うアプローチが求められます。

患者さんが何で悩み、どうなりたいのかという希望や期待を聴きだし、その期待に添った結果を導くために医療者が提供できる方法にはどのような選択肢があり、またその選択によって得られる効果とリスクもわかりやすく情報開示されたうえで、患者さん自身が自らの意思で自分に合った医療を選択してもらうという手順です。
このためには医療提供者が患者さんの悩みや期待を聴きだし具体化するという手順が必要にるのです。
つまり、この患者さんの話を「聴く」という医療行為が必要であるにもかかわらず、現代の医療現場では不足しているのです。

医療従事者は丁寧に患者さんの話を聴く、患者さんは自分の希望を正しく伝える、この基本ルールを守ることがより良い医療への第一歩なのです。

「今、子供が危ない! ~小さな顎がもたらす、人生のリスク~

2023年8月7日

「今、子供が危ない!

~小さな顎がもたらす、人生のリスク

小さくなった子供の口

「歯は1000年で1%小さくなり、顎は1世代で30%小さくなる」

これは国立博物館主任研究官であった馬場さんの言葉です。
この言葉が意味することは、歯の大きさはおおよそ遺伝的な要素で決まり簡単には変わることがないが、顎の大きさは成長過程の環境の要素で決まりしっかりと使わなければ成長しない、ということを示唆しています。

現代社会では生活環境の急激な変化に伴い顎を使わない生活スタイルが定着しています。
母乳哺育から人工乳哺育へと変化し、また食品加工技術の進化と食品関連企
業の発展は柔らかくて食べやすい加工食品を氾濫させました。

たとえばハンバーガーで昼食を食べる場合と昔ながらのごはんの日本食で昼食を食べる場合を比べてみましょう。

神奈川歯科大学の調査では、同じカロリー数を摂取するためにかまなければならない回数が、ハンバーガー562回に対しごはん食では1019回でした。
つまり噛むという機能を使わない使えない状況となっていることがわかります。
ですから現在の子どもたちでは、歯がきれいに並ぶだけの顎の大きさへと成長する環境自体が無くなっているのです。

実際に幼稚園で歯科検診を行うと、乳歯が隙間なくキレイに生えそろっている子供を多くなっています。
本来乳歯のあとに生えてくる永久歯の方が大きいため、乳歯の時には歯と歯の間に隙間なければなりませんが、この正しい顎の大きさが確保されていないのです。
顎の大きさが小さいと鼻(鼻腔)の容量が小さくなり呼吸をしにくくし、呼吸を補うために口呼吸となります。
また、顎が小さいことで舌が後方に押しやられ気道を圧迫し、睡眠時無呼吸症を起こしやすくします。

この2つの問題が健康で豊かな生活を過ごすための大きな障害となるのです。

新しい矯正治療の概念

矯正という歯科治療は、成長しなかった顎の骨の中に適切に歯が並ぶよう歯を間引いて行う治療方法です。

このため完成した歯並びは小さく、口や鼻の容積を小さくしてしまいます。
この結果、口呼吸や睡眠時無呼吸症が発生しやすい環境を作りだしてしまうのです。
いち早くこのような影響に着目した矯正治療先進国のアメリカでは、歯を間引く従来の矯正治療から、顎の骨自体を大きくして歯を間引くことなく歯並びが整うように支援する矯正治療が採用されるようになってきていました。

上顎に装着する特殊な装置(スケルトンタイプの拡大装置)により、上顎奥歯の位置を左右に広げることによって、口蓋正中縫合という骨の接ぎ目を広げて上顎の大きさを拡大するのです。

このことにより歯を間引く必要が無くなり、きれいな歯並びが確保しやすくなるとともに、口の容積を大きくするのです。
このことは舌の位置を安定化させ、舌の後方圧迫による気道の閉鎖を回避します。
また同時に鼻腔の容積も増やし、鼻からの呼吸を楽にすることにより、口呼吸を回避します。
鼻がよくつまる、口をぽかんと開けている、いびきをかく、食事の時にぺちゃぺちゃ音がする、乳歯の歯並びがきれいで隙間が無い、このような状態を確認されましたら是非とも一度相談されることをお勧めします。

口を健康な状態へと成長発育させることは、子供の将来の生活の質を高めることにつながるのです。

「長持ちする歯科治療」~完全歯科医療の概念~

2023年8月7日

「長持ちする歯科治療」~完全歯科医療の概念~

私が出会ったアメリカの歯科医

卒業後3年の勤務医生活を終えた私は、翌年に控えた自らの歯科医院の開業を前にアメリカへと留学しました。
その目的は、完全歯科医療をめざした診療を行っている歯科医師たちに会い、またその歯科医師たちが師事する咬合学(かみ合わせの理論)の大家P.E.Dawson先生のセミナーを受講することでした。
当時の彼は臨床歯科医師でありながらフロリダ大学での研究、さらには全世界の歯科医師を対象とした卒後研修セミナーを開催しているという、異色の活動を行う歯科医師でした。

患者さんに行う歯科治療の理論的説明

彼は完全歯科医療の概念に基づき、診査診断を行い、そして発見された問題を解決することによって、長期にわたり壊れない長持ちする歯科医療を実践していました。
その治療について患者さんに行う説明を、彼の著書[オクルージョンの臨床:日本語訳版]の中で以下のように紹介しています。

「あなたが口を健康にし、それを維持しようとするならば、われわれは次の2つの事を達成しなくてはなりません。

1、あなたの口の中で完全な清掃ができない場所をまったくなくす。

2、破戒的にならない程度まで、あなたの口の中のすべての咬合ストレスを減少させ
る。

これらの2つは私(歯科医師)の責任です。

あなたの責任は、あなたの口を完全に清掃に保ち、もし不均等な咬合ストレス(かみ合わせに違和感を感じること)が発生したら、それを正常に治すことができるように、私たちに知らせることです。
適切な食事と運動を続け、全身の健康を最高水準に維持することも、あなたの責任です。
もし私とあなたが各自の責任を完全に果たせば、あなたの歯を、あなたが必要とする限り守ることができるはずです。

治療が長持ちする訳

この患者さんへの説明文章をもう少しわかりやすく読み解いてみましょう。歯が使えなくなるのは、歯を失うに至らしめる病気が発生するからです。

その病気は、

①むし歯 ②歯周病 ③かみ合わせ です。

これら病気の内、むし歯と歯周病は口の中に住む細菌が原因で起こります。
ですから「完全な清掃ができないところをなくす」、「口を完全に清潔に保ち」という言
葉は、この2つの病気の原因である細菌を完全に取り除ける状態にするということを意味しています。

次に、かみ合わせという病気ですが、これは上下の歯の接触の仕方、顎の動きによる歯のすり合わせにより、歯に無理な力が加わって、歯が欠けたり、磨り減ったり、またグラグラになることで使えなくなることです。
正しい顎関節の位置で咬みあわせが作られていないとか、無理な咬ませ方をしているなどが原因です。
ですから、「咬合ストレスを減少させる」という言葉は、この不良な咬みあわせにより歯が壊れることから歯を守る対策を行うということを意味しています。
このように病気の原因から取り除くことで、新たな病気が発生しないようにすることが、歯を悪くしないと言い切っているのです。

完全歯科医療を行うには

治療結果が長持ちし、いつまでも快適に歯が使い続けられるためには完全歯科医療の概念に基づき治療を受けることです。
そのためには正しい診査・診断が不可欠となります。治療にあたっては、気になるところからやみくもに始めるということをしてはいけません。
口全体が一つの臓器ですから、総合的に評価を受けてから治療を受けてください。

それが何度も治療をやり直すということを防ぐ唯一の方法です。

治した歯が悪くなるのはなぜ? ~歯を失うことなく、一生快適に使うための手順~

2023年8月7日

治した歯が悪くなるのはなぜ?

~歯を失うことなく、一生快適に使うための手順~

あなたの家が火事になりました!!

大変です。
あなたの家の台所から煙が吹き出し、家が火事になりました。
あなたはどうしますか?

①火事になって家が壊れているのだから、修理をしな
くてはいけない。だから大工さんを呼んで壊れてい
るところを治してもらおう。

②まずは家が壊れている原因である「火」を消さなく
てはならない。だから消防署に連絡して火を消して
もらおう

答えは簡単!

火事になれば小学生でも119番に電話をして、消防隊に来てもらい火を消すということはすぐにわかります。
これが誰もが考える当たり前のことですが、この当たり前のことを基準としてお口の病気のことを考えてみましょう。

今、歯医者さんで行われていること

口の中に穴が開きました。おそらくむし歯です。
痛みはさほどではないのですが、冷たいものが凍みます。
食事をすると食べ物がつまり、咬むと少しの痛みを感じます。虫歯じゃないかと感じた方はそこで歯医者に出かけ、問題解決へと取り組みます。

「先生、穴が開いてむし歯だと思うのですが?」

「どれどれ、見てみましょう」

「大きな穴が開いてます。虫歯ですね。では治療をしま
しょう」

と伝えられ、おもむろに麻酔をしてもらうと、そのあとはお決まりの、キィーン!、ガリガリ!。
虫歯部分を削り終えると、あとは型取りをして次回には作った歯が入ります。
歯を留めるときにはセメントを入れた冠を、カンカン! とたたいて浮き上がらないように装着すれば完成です。
でもこの様子何かと似てませんか?
そうそう、大工さんが家を修理するときの音とそっくりです。
実は歯の治療は、口の中で大工仕事をしているようなものなのです。

当たり前が、当たり前でない、歯科治療

勘の良い方は気づかれたのではないでしょうか?

口の中に虫歯ができるというのは、歯が壊れていることであり、口の中で火事が起こっているのと同じです。

ただし違いは、「火」ではなくて「虫歯菌」が原因であるという点です。
家が火事ならば、まずは火を消し、そのうえで壊れたところを大工さんが修理します。
ですから口の中でもまずは虫歯の原因、つまり虫歯菌という火を消さなくてはなりません。

しかし、歯医者さんでは火を消す前にキィーン!ガリガリ!カンカン! という大工仕事が優先されているのです。
火を消さずにその横で大工さんがいくら家を治しても、火はまた隣に燃え広がり、また家が壊れます。

実はこれと同じことが口の中で起こっており、次から次へと歯が悪くなるのです。

つまり、壊れた歯を修理する対症療法が歯科治療の主流であり、根本から治す原因療法として取り組んでいないことが治した歯が悪くなる理由なのです。

正しい治療の手順

歯を失わないための正しい治療の手順は、3つのステップで進められます。

まず最初にするべきことは、歯を失う原因である4つの病気【むし歯・歯周病・不良な治療・かみ合わせ】の原因を取り除くことです
このことにより今問題がない良い歯が助かり、合わせて病気の再発も防がれます。

2番目のステップは、お口全体を総合的に高品質で治すことです。治療は1本ずつ行ったとしても、歯を使うときは口全体で使います。
バランスよく治すことが重要です。

そして最後のステップは、メンテナンスをすることです
歯医者さんの定期健診は、早期発見・早期治療が目的ではなく、手に入れた健康な状態を維持するために行うという考え方で受診することが重要となります。
このような手順を正しく実践すれば、歯は人生の終わりまであなたの豊かな生活を支えてくるのです。

「足立式POS歯科医療」 ~一生涯自分の歯で過ごすために~

2023年8月7日

「足立式POS歯科医療」

~一生涯自分の歯で過ごすために~

あなたには何が見えますか?

この絵の中には何が見えるでしょうか?

ある人はわし鼻でストールをまとったうつむきかげんの老婆が見えるでしょう。
でもある人にはパーティーに出席するかのようないでたちの髪飾りをした若い女性の斜め後ろからの姿が見えています。

たとえ同じ絵であっても「見る人のとらえ方によって変わる」というのはある意味当たり前の事なのです。歯科医療も同じです。
見る人のとらえ方で違うものになってしまうのです。

保険制度における歯科医療のとらえ方

国民皆保険制度に慣れた日本人は、この保険制度が目指す歯科医療のとらえ方がスタンダードなものだと考えています。

しかしこの保険制度により提供される歯科医療がどのようにとらえられ作られたのかをご存知の方は少ないようです。

保険制度により提供される医療は、憲法第25条に謳われた、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」という概念に基づき構築されました。
そしてそれは、過去からの古典的な歯科医療の概念に基づき、悪くなったところを修理するという考え方で作られたものなのです。
ですから保険制度による歯科医療サービスは、口の中に病気が発生した場合、最低限の機能的な回復を行うことを目的としてとらえ、構築された仕組みなのです。

一生涯自分の歯で過ごすという
歯科医療の組み立て

もしあなたが、壊れた部分の修理ではなく、歯を悪くすることなく快適に使い続けるということを期待し、その結果を保険制度による治療で求めようとすると、それは無理なことです。
そのためには、今一度違う角度から歯科医学というものをとらえなおし提供の仕方も変える必要があるのです。

「生涯歯を悪くしない」、「快適に使い続ける」、「美しさをたもつ」という目的を達成するために、何が必要で、どのように提供し、それらがどうすれば効率よく効果的に患者さんに提供されるべきであるかを考え、整理しなおすということです。

足立式POS歯科医療とは

足立優歯科には、悩みを持った患者さんがお越しになります。
治療により期待通りの結果が得られなかったことで悩み、そしてその解決策を求めてお越しになるのです。
多くの方は、しっかり噛める歯にしたい、歯を失いたくない、質の高い治療を受けたい、と望まれたのですが、その結果が得られなかったのでした。
それは期待とは異なる内容を提供している保険医療という医療サービスを提供する医療機関を選択した結果起こってしまった結果だったのです。
足立式POS歯科医療とは、「一生涯自分の歯を使い続ける」という考えに基づき効果的・効率的に構築された自由診療による医療展開のシステムです。
もしあなたが今受診している歯科医療サービスで期待どおりの結果を得られていないとすればこのシステムを受診されることをお勧めします。

初診「個別」相談へのご案内

当院では、患者さんが抱えていらっしゃるお口のお悩みや疑問・不安などにお応えする機会を設けております。どんなことでも構いませんので、私たちにお話ししていただけたらと思います。
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